こんにちは、渋谷で働く人事のブログです。
今日の書評は、テレビでふと観た闘牛に心を奪われ、闘牛士になることを夢見て28歳でスペインに渡った、フリーターの物語です。
内容
カネもコネも語学力もない。夢を叶えるための武器は胸に秘めた情熱だけだった──。
28歳の時に、著者は闘牛士になることを夢見て単身スペインへと渡る。そこで彼を待ち受けていたのは、想像を絶するような苦難の連続だった。何度も挫折しそうになりながらも、著者は一歩一歩階段を上り続ける。
「諦めないということは、どこまでも自分を信じ続けるということだ」。世界唯一の日本人闘牛士による、胸揺さぶる感動の自伝!
(Google Books より)
スペインの闘牛界は伝統としきたりと金とコネが支配する世界。例えは悪いですが、28歳で初めて来日したスペイン人が歌舞伎役者を目指すようなもの。
果たして無謀とも言える挑戦は身を結ぶのか。度重なる挫折と逆境の中で、著者が見たものは何だったのでしょうか。
レビュー
日本人の闘牛に関する知識といえば「トレロカモミロ」かと思いますが、まさにこの「トレーロ」を目指した日本人の物語。
闘牛の基礎知識に関する記述も過不足なく織り交ぜられ、会話や競技風景の描写も無理なく理解できるようになっています。
何よりもスペインの、闘牛場の熱気すら伝わってくるような情景と、著者の闘牛に対する鮮烈な感情の描写が特筆もの。
逆境に次ぐ逆境を、ひたすらなまでに熱い想いと行動力で乗り越えていく著者に感化され、読後は自分も大概のことはできるような気分にさせてくれました。
印象に残ったフレーズ
・「タイラ、技術は学ぶことができるし、訓練で得ることができるんだ。でも度胸や勇気は生まれ持ってきたかどうかで決まるんだよ。お前は俺よりはるかに勇敢だ」(P.098)
・私たちが外国で暮らすということは、好むと好まざるとにかかわらず、各自が日本を代表することになると思う。他国の人たちは目の前の日本人を通して日本というものを見ることになるからだ。(P.120)
・闘牛士の持つ肉体と感性は、楽器のようなものであると思う。同じ曲を演奏しても、それぞれの楽器で異なる音色が奏でられるのではないだろうか。日本人である私の存在そのものが唯一無二の個性だと言えた。「優劣」ではなく「違い」で勝負してみよう。(P.253)
・常識に反してまで自分の生き方を貫くには、やはりそれなりの覚悟と代償が要求される。それでも今自分が送っている人生を、他の誰のものとも取り替えたいとは思わない。(P.286)
おわりに
度重なるトラブルや挫折に苦しめられながらも、著者は1999年に日本人として史上3人目の闘牛士デビューを果たし、現在でも世界唯一の日本人闘牛士として、スペインで活躍しています。
著者の人生を見ていると、「できない」「無理だ」なんて言うことすら、恥ずかしくなってきますね。