【書評】好きなようにしてください(楠木 健・著)
こんにちは、渋谷で働く人事のブログです。
今日の書評は、一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授をつとめる筆者による一冊。
将来の不安を抱える就活生にも、大いに響くであろう内容でした。
内容
人生はトレード・オフ。その本質は「何をやらないか」を決めること。
環境の選択は無意味。「最適な環境」は存在しない。趣味と仕事は違う。自分以外の誰かのためにやるのが仕事。
仕事にどのように向き合うか。仕事の迷いに『ストーリーとしての競争戦略』の著者が答えを示す!
( Google Books より)
NewsPicksでの連載「楠木教授のキャリア相談」をベースに加筆修正したもの。
「大企業とスタートアップで迷っています」「キャリア計画がない自分はダメなのでしょうか」「器用貧乏な自分が嫌、専門性がほしい」など、
20~40代の読者から寄せられたキャリアの迷いや悩みに対する、時に辛らつでありながらも温かなアドバイス集です。
印象に残ったフレーズ
・具体的なスペックに基づくキャリア選択は、空間的な柔軟性と時間的な持続性の点で難があります。(略)実際に仕事を始めてみると、当初の予想や想定は大外れで、仕事がどうにも面白くないということは十分にありえる。しかし、やりたいことが具体的なスペックでしか意識されていなければ、そこから先の展望が描けません。(P.041)
・キャリア計画は全然必要なし。これが僕の答えです。(略)目標や計画を立てたところで、この世の中ではほとんどのことが自分の思い通りに行かないからです。(P.149)
・比喩的な表現になりますが、その状況自体が持っているメリット、これが位置エネルギーです。(略)ところが、ご本人がおっしゃっている通り、どこで働こうと自分がそこで何のために何をするかという運動エネルギー、ここに仕事の内実があります。(P.177)
・ワークとライフは横に並ぶ関係にありません。「ワーク・アズ・ア・パート・オブ・ライフ」というのが本当のところです。(P.213)
・キャリアに限って言えば、プリフィクス・メニューは存在しません。(P.322)
感じたことなど
タイトルの通り、ほぼすべての問いに対し基本的にはすべて「好きなようにしてください」と回答するという芸風なのですが、
ユーモラスかつ時にシニカルでありながら、どこか温かみのあるアドバイスがツボにはまる一冊でした。
仕事選びの基準に「好き嫌い」を第一に挙げ、環境の選択を無意味と一刀両断する姿勢には、多くの就活生が勇気をもらうのではないでしょうか。
自己分析に企業研究、キャリアプランニングは、就活の時期だけで終わりになるものではありません。
最終的に人生を終えるとき、「この会社で働いてよかった」「この仕事をしていてよかった」と感じることが究極の目的。
そういった意味では終わりなき旅であり、だからこそ折に触れて自分なりのキャリアコンセプトを自問することが大切なのだと気づかされました。
おわりに
就活に気合を入れて臨み、ひとつひとつのプロセスと結果に一喜一憂するのもよければ、
そのアンチテーゼとしてこういった「ゆるい」キャリア観に触れてみるのも悪くないと感じました。
どんな働き方がしっくりくるかは、実際に働いてみるまで分からないのですから。