【書評】陸王(池井戸 潤・著)
こんにちは、渋谷で働く人事のブログです。
今日の書評は、『半沢直樹』『下町ロケット』シリーズの著者が描く、骨太な企業ドラマです。
内容
勝利を、信じろ。足袋作り百年の老舗が、ランニングシューズに挑む。このシューズは、私たちの魂そのものだ!
埼玉県行田市にある老舗足袋業者「こはぜ屋」。日々、資金操りに頭を抱える四代目社長の宮沢紘一は、会社存続のためにある新規事業を思い立つ。これまで培った足袋製造の技術を生かして、「裸足感覚」を追求したランニングシューズの開発はできないだろうか?
世界的スポーツブランドとの熾烈な競争、資金難、素材探し、開発力不足―。従業員20名の地方零細企業が、伝統と情熱、そして仲間との強い結びつきで一世一代の大勝負に打って出る!
( Google Books より)
ベストセラーとなった『下町ロケット』シリーズと同じく、新技術による商品開発を目指す中小企業の物語です。
印象に残ったフレーズ
・「ただの金儲けじゃ仕事としてつまらないもんねえ」(P.095)
・人が必死で生きようとするのを否定できないのと同じように、会社の経営者が何とか生き残ろうと努力をする姿もまた、決して否定できないと思う。たとえそこにはったりや嘘が混じっていたとしても、人生をとしている人間の姿には、どこか尊さがあるのではないか。(P.156)
・「ビジネスというのは、ひとりでやるもんじゃないんだな。理解してくれる協力者がいて、技術があって情熱がある。ひとつの製品を作ること自体が、チームでマラソンを走るようなものなんだ」(P.337)
・「オレにいわせれば、会社が大きいから入りたいっていう動機は間違ってるな。(略)大事なのは会社の大小じゃなく、プライドを持って仕事ができるかどうかだと思うね」(P.352)
・「全力でがんばってる奴が、すべての賭けに負けることはない。いつかは必ず勝つ。お前もいまは苦しいかもしれないが、諦めないことだな」(P.359)
・「人生一度きりだぞ。好きなことをやれ。見栄張ってカッコつけて、本当に好きでもないことをする人生ほど後悔するものはない」(P.528)
感じたことなど
登場するキャラクター全てが人間臭く魅力的で、1人ひとりのセリフにまた味がある。
中でも(採用に携わっている立場としては)主人公の息子・大地から目が離せませんでした。
就職活動に失敗し、いやいや家業を手伝う毎日。生活に張り合いはなく、面接も連戦連敗。
そんな彼が、ひょんなきっかけから新規事業開発に抜擢され…。
就活中の皆さんはもちろんのこと、入社したものの方向性や仕事のやりがいに悩む若者にオススメ。
数年後に再読した時は、また違った気持ちになれることでしょう。
おわりに
世の中には色々な仕事がありますが、結局は楽しく、満足感を持って働けるかどうか。
後から振り返って「あの仕事をやれて幸せだった」と思えるかどうかが全てです。
そういった意味で、万人にとっての「良い会社」というものは存在しません。
自分に一番「合う会社」を見つけることが就職活動だと、思い出させてくれる一冊でした。